REPORT

2023年度シリア地震被災者支援:支援活動のご報告

2023年2月に発生したトルコ・シリア地震によるシリア被災者支援は、2023年8月をもって終了しました。多くのご支援をお寄せいただき、ありがとうございました。

活動開始までの動きとその背景

「支援の届きづらい地域・人々への支援を届けたい」

2023年2月6日、トルコ南部を震源とする最大マグニチュード7.8の大地震が発生し、トルコ・シリアであわせて死者5万6,000人以上、2,000万人以上が被災し、数百万人が避難する未曽有の大災害となりました。

【写真】震災直後のシリア・アレッポの様子(クルド赤新月社提供)

多くの国際支援が入りながら、その支援がトルコに集中する一方、2011年に起きた民主化デモをきっかけに紛争状態に陥り、現在も続く内戦の影響で、人道援助を必要とする人々の数は1,530万人、約675万人が国内避難民(注1)と紛争の影響が続くシリアでは、不安定な治安状況によりメディアや支援が入りにくい状況でした。(注1)UNHCR、2023年4月

このような状況下での震災発生だったため、情勢の不安なシリア国内には支援が届きづらく、すでに紛争によって避難していた人々に加えて震災によって新たな避難民が発生し、避難民の方々の状況が更に悪化する…というような状況が見られ、支援がより届きにくい地域・人々への支援を届けたいという想いで支援活動を開始しました。

とはいえ、シリアでの活動経験を持たないJVC単独での活動実施は現実的ではないため、隣国のイラクでシリア難民の支援を実施するJIM-NET(日本イラク医療支援ネットワーク)そして、シリア国内で支援活動をする現地のNGOと協働する形で、緊急支援を開始しました。

>>支援活動の背景・様子を動画で見る(担当の小林・並木が出演したものです)

活動概要

活動期間:2023年2月~8月

活動地域:シリア北西部、シャハバ地域、ジャラブルス地域

対象者 :トルコ・シリア地震による被災者

活動①クルド赤新月社の活動を通じて、医薬品や生活用品の支援を実施

シリアでの活動経験がなく現地団体とのネットワークも限られる中で、イラクのシリア難民への支援等を実施しているJIM-NETが日本チェルノブイリ連帯基金(JCF)と協働し、クルド赤新月社を通じてシリアでの支援を開始するとの話を聞き、JVCも加わることに。

クルド赤新月社は、アレッポ北部シャハバ地域の病院、保健センター、避難民キャンプで支援活動を行っています。

地震発生後、被災者約23,000人を対象にベッドマットや毛布などの生活用品の配布や、病院等への風邪薬やぜんそく薬などの医薬品の支援を実施し、JVCは他団体と連携してこの活動の一部を支援しました。

活動②女性支援団体SWEARと連携し、食料パッケージ・衛生キットなどの配布

また、現地に根差して活動する小規模な団体との連携も模索する中で、組織規模がJVCと近く、情報提供などにも協力的だったシリア女性支援団体SEWAR(Supporting & Empowering Women's Advancement and Rights)との協働を決めました。

治安上の理由などで現地訪問も難しい中でしたが、オンラインでSEWARのスタッフが避難民住居や人々の様子を映してくれ、JVCから数人にインタビューをするなどして、現地の状況を確認。

トルコとの国境にも近く治安状況が悪く支援が入りづらいジャラブルス地域の避難民キャンプで、支援活動を実施しました。

家を失い行先がなく、稼ぎ手の夫を亡くした世帯を優先に、250世帯(約1,250人)に食料パッケージ、衛生キット、女性用キットを配布し、女性や子どもを中心に精神的ケアも実施し、のべ120人が参加しました。

【写真】支援物資の配布の様子。女性のためのキットや、衛生キットも配布。生理用品や下着、シェービングクリーム、石けん、子どもたちの歯ブラシなどが箱に詰められています。

>>配布の様子を綴ったブログを読む

>>物資配布の様子を動画で見る

会計報告

また、以下にお預かりしたご寄付の使途のご報告もさせていただきます。

◆収入

寄付金 3,111,498円
雑収入(原稿料・講演料) 13,000円
収入合計 3,124,498円

◆支出

クルド赤新月社を通じた医療品・物資支援 700,000円
SWEARを通じた食料等の物資支援・精神ケア支援 2,002,505円
支払手数料 38,862円
旅費交通費 567円
通信費 17,000円
印刷費 10,000円
人件費  355,564円
支出合計 3,124,498円

皆さまからお気持ちを寄せて頂き、シリアでの支援を実施できたことに、改めて感謝申し上げます。

シリア地震被災者支援は2023年度を持って終了いたしましたが、イスラエル・パレスチナ情勢も受け、シリアを含む中東情勢が予断を許さない中、JVCはパレスチナやイエメンで活動を続けています。

今後ともJVCの活動を見守り、共に支えていただければ幸いです。

 

JVCシリア緊急支援担当:小林・並木

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