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日本

スタッフのひとりごと:映画はこんなふうに by 岩田健一郎(JVC会報誌 No.353より)

イラスト かじの倫子

「タクシードライバー」 をみたのは小学生の頃でした。「ラストのバックミラーに映るデ・ニーロの眼差しが何とも美しい」と父から聞かされましたが、 よく分かりませんでした。ただ強烈な印象だけが残り、爾来映画に囚われました。

ラオスに駐在していた頃、 重宝したのはネットフリックスでした。 ストリーミングで貪るように 「映画」 をみながらいつも思い出すのは、学生時代の先輩との何気ない会話とその不満げな顔です。「なんで高い金払って映画館に行くの?レンタルでいいじゃん」 「先輩、 映画は映画館でみるためにつくられてるからですよ」 私にとって、地元名古屋のゴールド・シルバー劇場も、 気仙沼駐在時に通った一関シネプラザも、忘れがたき思い出の場所です。

テレビである映画監督が 「みんなでみるものこそ映画。映画館でみれば、周りの反応を通して、自分と社会との関係がわかる」と話していました。ラオスのサワンナケートで廃館になった映画館が特別に開放された時、ラオス映画を初めてみました。座席はぐらつき、生暖かい風がビニールカーテンをゆらし、人のおしゃべりと出入りが絶えません。観客は大きな声をあげて笑い、ため息をつき、拍手します。こういうことかもしれません。

先日スーダンのカドグリに出張した際、かつて映画館だった場所の脇を車で通りました。いつかここで、壁をスクリーンにして、スーダンの人々と、スーダンの映画を一緒にみて、分かち合うことができたらどんなにか素敵だろう、ふとそんなふうに思いました。

ちなみにラオスでみた映画のタイトルは「トゥクトゥクドライバー」でした。

海外事業グループマネージャー・ラオス事業担当 岩田 健一郎

本記事は、2023年4月20日に発行されたJVC会報誌「Trial & Error」No.353に掲載された記事です。会報誌はPDFでも公開されています。こちらより、ぜひご覧ください。

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