【終了】児童保護・幼稚園支援 (南スーダン・イーダ難民キャンプ)
スーダン共和国南コルドファン州では、2011年6月に政府軍と反政府軍との間で大規模な紛争が勃発しました。 戦闘によって住む場所を追われた人々のうち、およそ10万人(当時)が国境を越え南スーダンへと逃れました。 国境に近いユニティ州のイーダ難民キャンプでは、現在も約4万人が避難生活を送っています。
イーダ難民キャンプは国連難民高等弁務官事務所が定めた「国境からの距離が50キロ以上」の基準を満たさないため、正式な難民キャンプとして認められていません。 そのため、一時的な避難所として、給水、食料、医療支援等は提供されてきたものの、国連による教育分野での支援は行われていません。
こうした状況の中で、難民は自身たちで幼稚園や小学校を設立・運営してきました。 しかし、幼稚園教員の多数は教育経験のないボランティアであったため、運営はうまくいかず体罰が日常化するなどの問題が起きていました。
2013年、JVCは難民が組織する教育委員会からの「ボランティア教員が最低限の知識やクラス運営方法を身に付けるための研修を実施してほしい」との要請を受け、年に1回の教員研修を始めました。 以来、毎年約50名の教員に児童心理・児童保護やクラス運営法などの基礎的な研修を行ってきました。
難民が運営する幼稚園では備品や教材の不足も問題となっていました。 難民が建設した草ぶきの教室には、黒板も、ゴザも、飲料水タンクも、ノートやペンもない状態でした。 JVCは、こうした備品や学用品の支援も行っています。
紛争によって親を失うなどし、厳しい家庭環境にあった子どもたちは、市場で廃品回収などをして生活していました。 2016年、JVCはそういった子どもたちへの就学支援を開始しました。 現在、常時約40人の児童を対象に、学費や学用品の提供、給食支援などを実施しています。
事業の最終年度でした。困難なかていかんきょうにある児童への就学サポートとして、学費、給食や学用品、衛生用品、スポーツウェアを提供しました。
また、保護者や現地行政を対象とした教育の重要性に関する啓発活動を3回行い、延べ98人が参加しました。そこで保護者や関係行政、住民・学校と調整を進め、JVC撤退後のそれぞれの役割を確認しました。
児童が栄養や栽培に関する知識を学ぶ家庭菜園活動や、長期休暇中の特別講習を実施し、児童保護に努めました。
イーダ難民キャンプでは国連およびNGOなどによる教育支援はなく、親を紛争でなくしたり、親や自分自身が肉体的・精神的障害を負った児童が多いにも関わらず、教育環境や児童保護の状況は極めて劣悪でした。
しかし、繰り返し実施した幼稚園教員研修による教育の質が向上し、文房具支援や設備支援を通じて適切な学習環境が確保され、幼稚園の定着に大きく貢献しました。
さらに保護が必要な児童への就学支援によって、将来的にイーダや故郷のスーダンに戻り、コミュニティの発展や安定に貢献できる人材となることが期待されます。
現地副代表 モナ・ハッサン
教育は持続可能な平和を育む鍵であるにも関わらず、スーダンではこのままでは世界最悪の教育危機に陥ります。
子どもたちが学校にいけない期間が長ければ長いほど、学校に戻れる可能性は低くなっていきます。教育を後回しにすることはできないのです。
私自身、昨年から避難を4回も繰り返し、記憶を消し去りたいほどに苦しい状況が続いていますが、様々な破壊と家族の離散を引き起こしたこの戦争が終わりを告げ、新しいスーダンの復興が始まることを願っています。
イーダ難民キャンプでは、2013年から続けてきた幼稚園への学用品支援・教員研修について、関係者との協議を重ねたうえで、2021年度での活動を終了しました。また、紛争による家族の離散や家庭環境により保護が必要な児童を対象に、課外活動や給食支援を含む就学支援を継続し、児童8名と家族の再会もサポートしました。
研修を重ねた幼稚園の教員は、児童との接し方・クラスの運営方法・論理的思考を身に着けるなど、知識や能力が向上しました。また、教育の重要性について理解が深まり、PTAのメンバーを中心に、校舎の修復・教員の補助などの役割を 積極的に担うようになりました。
(幼稚園の児童を見守る校長先生とPTAの保護者)
世界はあなたの小さな一歩から大きく変わります。
私たちが世界をより良くする活動は、
皆さまのご寄付・ご支援に支えられています。
日本国際ボランティアセンターでは
マンスリーサポーターや物品寄付をはじめとする様々なご支援を受け付けています。
良い世界の実現のために私たちの活動を応援してください。
JVCのことをまだ知らない、あまり知らない方はまずはこちらをご覧ください。