戦闘開始から1年、スーダンの人道危機が手遅れになる前に
スーダンで国軍(Sudan Armed Forces:SAF)と準軍事組織「即応支援部隊」(Rapid Support Forces:RSF)との大規模な戦闘が始まってから、この4月で1年になります。
国際社会や周辺国による仲介努力にも関わらず停戦は実現せず、首都ハルツームで始まった戦闘はダルフール地方、さらにスーダン各地に拡大しています。国内・国外に避難する人びとは850万人を超え、この3月国連は「世界最大の避難民危機」と警鐘を鳴らしました。
人口の3分の1を超える1800万人が深刻な食料不足に直面し、5歳未満の約400万人が急性栄養失調に陥っています。このままでは数か月以内に最悪の飢饉が訪れることが国連安全保障理事会で報告されています。
戦闘地域では民間人への略奪、性暴力が蔓延しています。ダルフールでは特定の民族グループを標的に大量殺戮が行われ「民族浄化」とも呼ばれています。
しかし日本では、昨年4月の戦闘勃発時に「邦人退避」を巡って報道が過熱した後は、スーダンを取り上げる報道はわずかしかありません。海外でも報道は少なく、現地からは「世界はウクライナやパレスチナにしか関心がないのか」という悲痛な声があがっています。
スーダンでは2019年に長期独裁政権が倒れて民政移管プロセスが始まり、スーダンの人びとは民主化と国内紛争の終結に希望を見出しました。しかし、圧倒的な支持を受けた民主化勢力に対して、国軍とRSFが手を組んで政治の実権を握り続けたため、大きな混乱が続きました。そして最後は、民政移管に向けた軍事統合を巡って国軍とRSFとが対立し、昨年の全面衝突に至りました。
両軍はともに、旧独裁政権の時代から政治に取り入って利権を獲得し、軍系ビジネスなどで利益を上げてきたと指摘されています。特にRSFはダルフールの金採掘、イエメン戦争への派兵などの傭兵ビジネスで知られています。軍事統合により利権を失いたくないために戦闘が起こったとも言われ、利権に結びつく周辺国の一部がRSFへの軍事援助を行っているとの疑惑は数多く報道されています。
国際社会は、国軍あるいはRSFを支援する他国からの介入に対して厳しい措置を取り、停戦への道筋を付けるべきです。そして、民政移管のプロセスへの復帰のために必要な働きかけを行うべきです。
戦闘開始から1年となる4月15日、「スーダン及び近隣諸国に関する国際人道会議」がパリで開催されます。これに合わせ、スーダンで活動する国際NGOが共同声明を出しました。声明は、会議に参加する各国や国連機関に向けて、差し迫った飢饉を防ぐための援助資金の拡大、人道支援を現地に届けるアクセス確保のための外交努力、停戦に向けた努力と民間人の保護に関する外交的働きかけの強化、などの点を強く求めています。私たちもこれに賛同します。
日本は長年にわたりスーダンの主要援助国であり、現地の人びとからは、現在の危機を脱するための日本の役割を期待する声が少なくありません。日本政府には、パリ会合や国連安全保障理事会の場で、スーダンの即時停戦とともに、他国による戦闘当事者への支援の停止、現地の住民保護、人道支援資金の拠出拡大に向けて、積極的な外交努力を期待します。
2024年4月12日
特定非営利活動法人 難民を助ける会(AAR Japan)
特定非営利活動法人 日本国際ボランティアセンター(JVC)
特定非営利活動法人 ロシナンテス
(五十音順)
◆特定非営利活動法人日本国際ボランティアセンター(JVC)
担当:今井、後藤
電話:03-3834-2388
メール:imai@ngo-jvc.net
4/12プレスリリース:戦闘開始から1年、スーダンの人道危機が手遅れになる前に
特集ページ:スーダン戦闘から一年。現地は、いま
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